私はマンション管理士登録をした数年前から、「日本マンション学会」に入会しています。会員はシンポジウムや見学会、7つほどある研究委員会に参加できることになっていますが、もっぱら研究発表や論文が掲載された会誌をちょっと読むだけの幽霊会員となっています。
しかし、この会誌の中でも「マンション判例情報」はいつも欠かさず目を通すことにしています。この1、2年だけでもかなりの数のマンションに関わる訴訟事例があり、どれも興味深く見ています。
判例というのは調べてみると、特定の裁判において裁判所が示した法律的判断で、講学上は最高裁判所によってなされたもののみを「判例」と呼び、下級裁判所によるものは「裁判例」として区別されているようです。
判例はもちろん、裁判例でも、裁判所が示した判断というのは法的な解釈の最も重要な位置にあり、我々のようにマンション関連の実務に携わっている者にとっては、貴重な判断材料となっていることに間違いありません。
新聞等で話題になった「眺望権」をめぐる裁判があります。
隅田川花火大会を鑑賞できるマンションを分譲した業者が、少し離れたところにその眺望を妨げるマンションを建築したことで、買主がマンション価値下落分と慰謝料を請求した事件です。
東京地裁は、訴えを起こした買主が花火の眺望を非常に重視して購入したということを分譲業者が知っていたので、業者は信義則上居室から花火鑑賞を妨げないように配慮すべき義務があるとして不法行為成立を認め、業者は慰謝料を支払うことになったということです。
マンション価値そのものの下落分については、証明不十分ということで請求を棄却されたのですが、高層マンションが林立する都心では衝撃的な判決ではないかと思いました
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