先日、ある電話があった。相手は首都圏内にて動いているという不動産鑑定士からだった。話の内容は簡単にいうとマーケティング的な内容と実際にマンションを購入したときの対費用効果、そして今後の賃貸の動き方・展望だった。どうやら取引相手のファンドから依頼されての電話調査だったらしい。詳しく話してみると札幌にきたことはなく、中心部あればある程度のリーシングがオールシーズンで可能と、マンションを販売しているほかの業者から言われたらしい。まるで神話のような話だが、来たことも無ければ販売促進に使用される表に示してあるグラフと販売業者からのアドバイスのみを参考資料にしていれば、おのずとそのような神話的・妄想的なマーケティング結果がはじき出されるのかもしれない。このときは場所の利と最近の状況のみ教えて後は企業秘密ということで電話を切った。
現在、先述したとおり、札幌には多くの資本が流入してきている。個人投資家からのものや、国内外ファンドからの資本など多くの投機的資本流入がある。札幌の人口が現在189万人ということを考えると、投資家の「考え」の中には賃貸マンションを建築・販売・リーシングなどをある程度手がけても利潤は出そうな気配はあるかもしれない。実際多くの資本が流れ込んでいることがその考えが根底にあることをおおよそ示している。銀行に預けていても大きな利潤を得ることは出来ないのは明白であるし、株や先物のようにハイリスクハイリターンな投資も確実性の高い情報が無ければ非常に高いリスクを抱え込まなくてはならない。そうした場合、ある程度の利潤を生み、ある程度の逃げ道(現金化)が確保されているようなものへの需要が高まってくるのは必定である。また、その過程においてその安全な投資の中でもなるべく純利が取れそうでうまみのあるような物を探すのは普通であれば誰しもが行う一手である。大都市、且つ、不動産が安価で大量に供給されている都市における不動産投資がまさにそれに当たるのである。人口が多ければ流動的な賃貸需要がある程度確保でき、たとえ何らかの事由で撤退するにしても不動産の価値が、しかも大都市の不動産において価値が「0(ゼロ)」になるようなことはまずありえない。このことから比較的リスクの少なく、利益が多少確保できそうな「地方中核都市不動産投資」へと資金は動いていくのである。
ただ、この状況下において確保しなければならない条件がいくつかあり、それが確保できないようであればいくら資本投入したとしても、いずれは撤退を余儀なくされるときが来る。まず、条件として一番に挙げられるのは「場所」である。大都市だから、都市の中心部だからという神話は、今は通用はしないし、投資が盛んに行なわれている現状を考えると他の投資家も同じような手を打ってくることが安易に想定できる。つまり場所の利を得るというのは既に当然とも言えることなのである。二つ目の条件はリーシングを行なう際のマーケティングである。場所としてのバリューはあってもリーシングにおいては劣るような物件もあるのでこのことを良く調査する必要がある。3つ目は「パートナー」選びである。投資を行なう際に一人で何もかもを行なえるような状況には誰しもおかれていない。特に不動産投資には、マーケティングをして、物件を買って、リーシング、マネージメント、ケアといういくつもの付随作業がある。この作業の一つ一つが重要なカテゴリーであり怠ることの出来ないものなのである。このバランスや見通しを誤ると後で手痛いしっぺ返しを食らうことになる。
不動産は決して安い買い物ではない。まして、投資ともなると自分が住むわけではないので安易に考え易いが、それは全くの逆で、自分が住まないからこそ大きな梃入れをし、少しでも長く、安定した回収を行なえるようしていかなければならないのである。自分の商品である投資物件を如何にうまく回すか・・・投資家の場所、物、パートナーを選ぶ「目利き」が問われる時代がやってくるのではないだろうか。
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